© 2013 cyber hanout s.a.r.l.

​laRihla

諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物

1/14

Photograph by Gilles ESPIASSE & Yukiko KABAYA

 もっと内部へ、より深層へ、と。モロッコの中を駆けめぐるばかりだった10年間が過ぎたころ、ふと外の世界に出てみたくなった。自ずとチャンスが舞い降りてきて、そして井の中の蛙の大航海時代の始まり。

 事始めとしてイエローカードを取る。長年アフリカ大陸にいながらにして、初めてサハラ以南のブラック・アフリカの国を訪れるようになった。そこでは、肌色が真っ黒な人たちが、モロッコ人と同じ言葉で「サラーム」とあいさつをしていた。何度か通い、信頼するクラフト仲間ができた。エスニシティ、トライブごとに異なる技や意匠の世界に、じんわり病みつきになりかけている。

 

 過去にたった一度、駆け足で観て回っただけのインドを再訪し、じっくり時間をかけて回った。百聞は一見にしかず。独自の文明化をたどった彼の地は、とんでもないほど奇天烈で摩訶不思議の国だった。息つく暇もないほどのカルチャー・ショックのさざ波。手仕事や伝統的工芸品についての認識や態度を改めざるを得ないほどの、まさにコペルニクス的な展開への誘いだった。
 

 旅をして、その土地々々で出会った素材を持ち帰り、モロッコの伝統技術で形にする。旅先で得た驚きと興奮、そして異国の文化や感性をモロッコの手仕事と異種交配させて、ハイブリッドなクラフトを生み出す。

 初めの一歩として、マラケシュ郊外の「カルカルの女性たち」と共に、旅先から持ち寄ったテキスタイルでプフを作り始めてみることにした。年に何度か立ち寄るフランスからは、西洋更紗 トワル・ドゥ・ジュイ 《Toile de jouy》 を。ブルキナファソとコートディヴォワールからはバウレ族 《Baoulé》 の腰巻を。そしてインドからはハイデラバードの手織りイカットを。

 1325年にモロッコから出発して以来、30年あまりを旅に捧げたベルベル人旅行家 イブン・バットゥータが残した見聞録は、通称 Rihla と呼ばれている。アラビア語で「旅」の意味。この言葉を冠し、北部のタンジェ生まれだという彼の誕生の日 2月24日を出帆の日に選んで。laRihla 《ラリラ》 の旅が始まる。


 この先、いつどこでどんな煌めきと出会えるだろうか。インシャアッラー

​2019.2.24

  • Grey Facebook Icon
  • Grey Instagram Icon
  • グレーFacebookのアイコン
  • グレーInstagramのアイコン